| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-064  (Poster presentation)

石の下を観る : ヤマトクロスジヘビトンボの幼虫における闘争の過程とその結果【A】【O】
Observe beneath the stone: the process and outcomes of the contest behavior in Megaloptera larvae, Parachauliodes japonicus【A】【O】

*Kai OKUYAMA, Satoshi WADA(Hokkaido Univ.)

  空間は多くの動物にとって重要な資源である。そのため、動物は限られた空間を巡り闘争を行うことがある。本研究の対象種、ヤマトクロスジヘビトンボの幼虫は川底の石の下に留まり、待ち伏せ型捕食を行う。石の下に留まることは捕食回避の機能もあると考えられる。したがって、本種の幼虫にとって、石の下という空間は重要な資源である。また、野外では、幼虫が利用できる石が限られるため、幼虫は石の下を巡って闘争を行うかもしれない。そこで、本研究では幼虫が石の下で遭遇した際に、個体間で闘争が見られるかを検証した。
  室内実験により、石の下で2個体が遭遇した際の行動を観察した。石を1つ入れた水槽に幼虫を1個体投入し、1日馴致した。その後、最初の個体が石の下に入っていることを確認し、新たに1個体をその水槽に投入した。これら2個体が石の下で遭遇した際の行動を水槽の底面から、鏡を用いて観察を行った (n = 55) 。
 石の下で2個体が遭遇すると、多くの例で闘争が見られた。闘争の過程は、以下の2段階に分けることができた;接近段階:2個体が頭を近距離で向き合わせる、攻撃段階:2個体が頭で相手を押し合う。体サイズ差が大きい場合は、接近段階で片方の個体が闘争から撤退する頻度が高かった。そのため、体サイズは闘争結果にも影響を与えており、大型個体は闘争で勝利する頻度が高かった。また、闘争開始時の2個体の相対的な位置も闘争結果に影響を与えていた。
  本研究の結果はヤマトクロスジヘビトンボの幼虫が野外でも空間を巡って闘争を行うことを示唆する。発表では、本種の幼虫における闘争の過程と結果の両方に注目し、それぞれに影響を与える複数の要因を考察する。


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