| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-070  (Poster presentation)

中型哺乳類のフェンスに対する行動【O】
Behavior of Medium-sized Mammals Toward Fences【O】

*青野明都(県立川崎高等学校)
*Minto AONO(Pref. Kawasaki high school)

都市では敷地ごとに柵、フェンス、塀などで仕切られることが多く、これらは野生動物にとって移動の障害となり得る。しかし都市に生息する野生動物へのフェンスによる影響を調べた研究は少ない。そこで、タヌキ、アライグマ、ハクビシン、イエネコの中型哺乳類4種のフェンスに対する行動についてカメラを用いて調査した。横浜国立大学内のフェンス沿いにカメラを設置し、4種の行動をフェンス乗り越え、穴の通過、フェンス沿いの移動の3タイプに分けてカウントした。その後、フェンスに開いていた穴を塞ぎ、行動に変化が出るのかを観察した。撮影結果をもとに、種ごとの乗り越え確率や穴通過確率についてFisherの正確確率検定を使い解析した。その結果、フェンスの乗り越えを選択する確率はハクビシン、アライグマ・イエネコ、タヌキの順であり、ハクビシンは穴があっても乗り越えることがあるのに対して、アライグマとイエネコは穴があればそれを通過するが穴がふさがれた場合は乗り越えることがあり、タヌキは穴があれば穴を通過し、ふさがれても乗り越えることはなかった。この研究はフェンスを越えるための食物などの誘引がない場合の結果であり、強い誘引があればタヌキもフェンスを越えようとするとの報告がある。これらの結果から、都市のフェンスは動物の移動に影響を与え、動物種によっては都市内の移動の障害になるため、都市において動物種間に密度差をもたらす可能性がある。被害を抑制しながら動物と共生していく地域を設計するためには、種の特徴を知り、それぞれに沿ったフェンス設計が大切である。


日本生態学会