| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-072  (Poster presentation)

陸生等脚類の肉食性土壌動物に対する捕食回避行動【A】【O】
Anti-predatory behavior in terrestrial isopods against carnivorous soil arthropods【A】【O】

*遠藤祐人, 大見川遥, 阿部博和(石巻専修大学)
*Yuto ENDO, Haruka OMIKAWA, Hirokazu ABE(Ishinomaki Senshu University)

等脚類にはダンゴムシのように球体化する種とワラジムシのように球体化しない種が存在する。等脚類の球体化は海と陸の両方の系統で、また、陸でも複数の異なる系統でみられ、独立に複数回獲得された特徴であると言える。一般的に、等脚類の球体化は捕食回避のためとされているが、どのような捕食者に対してどれほど捕食回避に寄与しているのかはほとんど検証されていない。また、オカダンゴムシとワラジムシのように、球体化する種としない種が同所的に生息していることについても合理的な説明はなされていない。そこで本研究は、オカダンゴムシの球体化の捕食回避機能と、同所的に生息するワラジムシの捕食回避行動を検討することで、両種の捕食回避戦略の違いを探ることを目的とした。陸生等脚類2種の捕食者として肉食性土壌動物であるハサミムシ類4種とムカデ類4種を用いた被食実験を行い、各種の攻撃率と捕食率を調べた。次に、攻撃率と捕食率が最も高かったハマベハサミムシを捕食者として、陸生等脚類2種の捕食回避戦略を探る被食実験を行った。ハマベハサミムシからの攻撃の割合はワラジムシよりオカダンゴムシで高く、実験終了時の被食率はオカダンゴムシの方が低かった。捕食者の1回目の攻撃における捕食回避率はワラジムシが64%であり、オカダンゴムシが球体化に成功した場合は94%、不動を示した場合は100%、球体化に失敗した場合は74%であった。オカダンゴムシの不動は捕食者が小さい場合にのみみられた。ワラジムシは捕食者を感知すると主に逃走または不動を示し、捕獲された際に忌避物質の分泌が見られたが捕食行為の中止は見られなかった。以上の結果、オカダンゴムシの球体化はハマベハサミムシに対する捕食回避として有効であることが明らかとなり、ワラジムシでは攻撃されないための行動や忌避物質による捕食回避戦略を持つが尾角をもつハマベハサミムシに対しては効果が薄いことが推察された。


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