| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-074  (Poster presentation)

ヒラアシクサアリ Lasius spathepus の化学防御物質と警報フェロモン【A】【O】
Defensive Chemicals and Alarm Pheromones of the Lasius spathepus Ants【A】【O】

*高谷佑生(京都大学), 高石悠生(京都大学), 野崎翼(九州大学), 竹浪荘道(京都大学), 丸山宗利(九州大学総合博物館), 森直樹(京都大学)
*Yu TAKATANI(Kyoto Univ.), Yusei TAKAISHI(Kyoto Univ.), Tsubasa NOZAKI(Kyushu Univ.), Takamichi TAKENAMI(Kyoto Univ.), Munetoshi MARUYAMA(Kyushu Univ. Museum), Naoki MORI(Kyoto Univ.)

クサアリ類は、ヤマアリ亜科ケアリ属クサアリ亜属に属するアリで日本全国に広く分布する。クサアリ類は大規模なコロニーを形成することから、二次林において重要な役割を担うと考えられている。クサアリをホストとする好蟻性昆虫 (アリと寄生・共生関係を持つ昆虫) の種数もきわめて多く、日本ではクサアリ類のコロニーをホストとするものが最も多様である。しかし、その多様性が創出された分子基盤および進化史はいまだ解明されていない。我々は、クサアリ―好蟻性昆虫 共生系を対象に化学生態学的研究を行うことで、この解明を目指している。本発表では、西日本に普通に見られる ヒラアシクサアリ Lasius spathepus を材料に研究を行った。まず、本種の化学プロファイルを作成するため、分析を行った。コロニーは 京都大学吉田キャンパス および 九州大学伊都キャンパス のものを用いた。ワーカーをジクロロメタンに浸し、粗抽出液をGCMS分析に供した。その結果、標品と保持時間およびMSスペクトルが一致したことから、undecane (tR = 15.9) および citronellal (tR = 16.9) を同定した。未知化合物をシリカゲルクロマトグラフィー および HPLC により単離し、黄色油状物質を得た。この化合物の各種 1D-NMR (1H-, 13C-NMR) および 2D-NMR (HSQC, COSY, HMBC, NOE) を測定し, 未知化合物を 3-formyl-7,11-dimethyl-(2E, 6Z, 10)-dodecatrien-1-al (FDDal) と同定した。GCMS および NMR により同定した化合物の標品を用い、ヒラアシクサアリ L. spathepus ワーカーに対する警報フェロモン活性を確認した。


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