| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-078 (Poster presentation)
都市の人工光は、野生生物に様々な影響を及ぼし、特に鳥類や爬虫類で活動を夜間へ延長する活動パターンの変動が示唆されている。キタリス(Sciurus vulgaris)は昼行性だが夜間に活動することが示唆されており、人工光がある都市では人や車を避け、夜間に活動する可能性がある。そこで本研究では、キタリスを対象に夜間光の強い都市と弱い郊外を比べ、都市は夜間の活動を増加させるという予測を検証する。
調査は北海道帯広市で2017、2024年の5-6、10-11月に実施した。夜間観察は困難なため、首輪型加速度ロガーを使用した。夜間光の影響の検証のため、夜間光強度の異なる6地点で各地点1–4個体、計16個体の3軸加速度を25 Hzで平均7.9日間(2–18日)記録した。算出した姿勢角と動きの激しさから決定木で行動分類し、日周パターンを分析、夜間の行動を比較した。また、夜間光強度は衛星画像を基に調査地点、期間別に取得した。
ほとんどの個体は夜間光の強弱に関わらず、日の出前(薄明)から活動を開始し、日中に活動を行い、日没までに活動を終了するパターンであった。一方で、最も夜間光強度が高い地点の3個体中1個体は、データを取得した全5日間、0時から採餌などの活動を開始し、日の出後の午前9時まで活動していた。また、夜間光強度が低い地点でも、典型的な昼行性の活動パターンを示す日と、日没前から日の出にかけて夜間行動を行う日がある1個体が確認された。
本研究で発見した夜間行動は普遍的な現象とは言えないが、夜間光強度が低い郊外でも日によって夜間に行動を延長する個体が確認されたため、昼行性と考えられていたキタリスが夜間にも行動することが明らかになった。さらに、夜間光強度の高い都市で夜間に活動を増加させる個体を確認したことから、夜間光が夜間活動を促進したことが示唆される。強い夜間光が、人や車を避けるために夜間の行動を増加させた可能性があるだろう。