| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-096  (Poster presentation)

地衣類に擬態したアリジゴクの行動と生活史【O】
Befavior and life cycle of antlion larva mimicking lichens【O】

*森豊彦(京大生態学研・研究員)
*Toyohiko MORI(Kyoto Univ Center for Eco Res)

非営巣性コマダラウスバカゲロウの幼虫は岩崖、土崖、樹木の垂直面に生えた地衣類の中に生息する特異なアリジゴクであり、日本のアリジゴクの中で最も原始的であると考えられる。標識放飼・再捕獲法によって①令構成の季節変化、②生活史の推定、③個体数の季節変動④捕食頻度の推定、⑤生体重の変動、⑥標識個体の消長、⑦移動軌跡、⑧寄生峰の寄生率、⑨越冬期の生態を調査した。
 行動観察では特に2令と3令幼虫に標識印を施し、標識印個体の移動軌跡と待伏せ期間を調べた。これらの調査結果から、基本的には2年型の生活史を送り、5月から9月に繭を作り、全ての令の幼虫が越冬することが判明した。捕食頻度では5月から12月の間の標識放飼・再捕獲法の期間に平均約50%の幼虫が少なくとも1回以上の間にエサを捕食していた。特に、捕食頻度は7月から9月上旬にかけて高く、12月以降の越冬期でも捕食を行い、かなりの頻度の捕食がみられた。移動行動では、5月から7月の間、殆どの幼虫が1回から8回移動した。寄生峰の寄生率は28.6%であり、主に5月から6月と8月下旬に寄生峰が羽化した。以上から、特筆すべきことは、幼虫は越冬期に休眠せずに盛んにクモなどのエサを捕食していることが判明した。


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