| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-098 (Poster presentation)
寄生性の扁形動物である二生吸虫の一部の種では、レジア幼生の繁殖分業が報告されている。レジアは第一中間宿主の巻貝に寄生し、次の宿主に分散するセルカリア幼生を産生する。繁殖分業を行う吸虫では、セルカリアを産生せず、体サイズが小さく、競争相手の攻撃に特化した兵隊型レジアがみられる。繁殖分業の報告がある吸虫の大半の種の兵隊型レジアは、系統の離れた別種個体は攻撃するが、同種別コロニー由来の個体は攻撃しない。同種も宿主資源をめぐる競争相手となるため、このような現象は同種認識の欠如による可能性がある。競争相手への攻撃頻度は、系統関係の近縁性や感染率によって異なる可能性がある。本研究では、兵隊型レジアをもつ吸虫が、同種や近縁種を攻撃するか明らかにすることを目的とした。
Cercaria batillariaeはホソウミニナやウミニナに寄生する吸虫である。本種には遺伝的に異なる9種 (HL1 - 9) が含まれる。HL7のレジアは繁殖分業を行い、兵隊型は同種別コロニー個体を攻撃しない (Miura K. et al. unpublished)。本研究では、ホソウミニナに高頻度で寄生するHL3を対象個体とし、同種や近縁他種を相手個体に、攻撃頻度の比較を行った。
香川県観音寺市の干潟でホソウミニナを採集し、レジアを得た。攻撃実験に先立ち、HL3のレジアの形態測定を行い、形態の二型を確認した。攻撃実験はHL3の兵隊型レジアを対象個体とし、同種同一コロニー個体、同種別コロニー個体、系統関係が近縁であり調査地点において感染率が高いHL1及び、系統関係が遠く調査地点において感染率が低いHL7の4群の繁殖型を相手個体とした。
攻撃行動はHL7を相手個体とした場合のみで観察されたが、他の組み合わせとの攻撃頻度の有意差はみられなかった。本研究では、HL3は同種も近縁種も攻撃しないことが示唆された。今後は別種を対象個体としたとき、攻撃パターンに同様の傾向がみられるか検討する必要がある。