| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-099  (Poster presentation)

積雪状況に応じたニホンノウサギにおける採餌行動の変化【O】
Changes in the foraging behavior of Japanese hares in response to snow cover conditions【O】

佐藤快, *斎藤昌幸(山形大学)
Kai SATO, *Masayuki SAITO(Yamagata Univ.)

積雪地域では餌資源が雪に埋まるため、哺乳類は採餌することが難しくなる。また、餌資源が雪によって制限されると、利用可能な餌を探索するための移動コストが増加する。積雪状況は時空間的に不均一であることから、哺乳類は積雪の変化に応じて採餌行動を変化させているはずである。本研究は、ノウサギを対象種として、積雪状況に応じた採餌戦略を評価することを目的とした。2024年1–3月に山形県鶴岡市および西川町で調査を実施した。ノウサギの足跡を追跡し、糞の採取と、彼らが利用する餌植物の利用可能性 (雪上分布) と採餌状況 (食痕) の記録を行った。雪上分布は追跡ルート上で10 mごとに、食痕はルート上で発見し次第記録した。採取した糞の内容物分析を行い、積雪深との関係を見るために一般化線形モデル (GLM) を構築した。また、餌植物の雪上分布と採餌状況を積雪深で説明するためにGLMを構築した。さらに、餌の探索にかかるコストを評価するために、採餌場間の距離と積雪深の関係をGLMで解析した。調査の結果、35個体分の糞を採取した。また、餌植物の雪上分布は360地点、食痕は、170地点で記録した。糞の解析から、ノウサギは積雪深が深い場所では木本類、浅い場所では草本やササを利用していた。しかし、餌植物の雪上分布と採餌状況の解析から、木本は種に応じて結果が異なっており、積雪深ではなく利用可能性に応じて採餌されることが示された。採餌場間の解析では、積雪が深いほど採餌場間の距離が長くなったことから、餌を探索するための移動コストが増加することが示された。本研究からノウサギは、積雪深が浅ければ、草本類やササ属の下層植生を利用しつつ、餌として足りない部分を、利用可能性に応じた木本を利用して補うことが明らかになった。一方、積雪深が深くなると、草本やササ類を採餌することが難しくなり、高い移動コストをかけて木本類を利用していた。


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