| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-108 (Poster presentation)
アオウミガメは、一般的に孵化後数年間の外洋生活を経た後、沿岸域の狭い範囲に定住し、その後は主に海草や海藻を摂取する。近年、アオウミガメの摂食圧の増大が、海草や海藻資源の減少を引き起こし、熱帯浅海生態系の多様性低下を招くと懸念されている。個体ごとの特定の餌種や採餌場に対する執着度を理解することは、ウミガメの採餌生態の解明及び生態系の保全において重要である。本研究では、餌の分布に対応したアオウミガメの行動を解析し、特定の餌種や採餌場に対する固執性とそれを左右する要因を明らかにすることを目的とした。
面積約13 km2の沖縄県黒島周辺の海域にて、亜成体のアオウミガメを採餌場で刺網により捕獲した。消化管洗浄により捕獲前に捕食した餌を採取した後、背甲に加速度等を記録する行動記録計、ビデオカメラ、GPS記録計を装着した。4個体は捕獲地点付近に放流し、14個体は島を挟んで捕獲地点の反対側(直線距離で約2-4 km離れた地点)に移送して放流した。捕獲から放流までの期間は2-18日であった。放流して3-4日後に個体から切り離された装置を回収した。餌となる海藻や海草の生息適地を推定した生息適性度と、移動経路及び摂餌頻度との関係を調べた。
捕獲地点付近で放流した4個体は3-4日後もその場に滞在し続けた。一方、移送した14個体中12個体は、放流地点付近にも海草や海藻が生息していたにも関わらず、放流後3日以内に捕獲地点付近まで移動した。移動後、各個体はビデオ記録中に捕食が確認された餌種の生息適性度が高いエリアに滞在した。また、放流地点付近より捕獲地点付近での摂餌率が高くなった(放流場:0-29回/h, 捕獲場:3-908回/h)。消化管洗浄でサンプルが採取できた7個体のうち6個体は、移動後も捕獲前と同じ餌種を選好する傾向が見られた。アオウミガメは小規模な島の周辺でも、捕食する海草や海藻類の生息適性度が高い特定の採餌場に強く固執することが明らかになった。