| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-114 (Poster presentation)
近年節足動物において,基質振動を利用したコミュニケーションが注目を集めている.振動刺激は信号の送り手が発する力学的な波が受け手の感覚器官に伝わることで,同種内ではフェロモンのように仲間の認識や繁殖行動を誘発する役割を果たしていると考えられる.演者らはこうした本能的特性に着目し,振動をもちいて農業害虫であるタバココナジラミ(以下,コナジラミ)の密度制御が可能であることを示してきた.コナジラミは基質である植物体を振動させることで個体間コミュニケーションをとっていることから,外部からの振動により,コナジラミのコミュニケーションが攪乱される結果,繁殖の遅延や不成立が生じている可能性が考えられる.そこで異なる実験条件の下,コナジラミの求愛から交尾,産卵に至る各段階に対する振動の影響を定量化した.その結果,振動を与えることで,求愛から交尾,および産卵に至るプロセスが段階的に阻害されていた.こうした一連の行動阻害が,コナジラミの密度低下を引き起こす主要因と考えられる.