| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-119 (Poster presentation)
ジンベエザメは世界最大の魚類であり、観光資源としての価値が高い一方で、IUCNレッドリストEN類と評価されている。大阪海遊館では生態解明に向け本種の継続的な飼育を行っている。本研究では、バイオロギングを用いて飼育下のジンベエザメの遊泳行動を定量的に評価し、飼育環境の最適化に寄与することを目的とした。実験は大阪海遊館海洋生物研究所以布利センターの第2水槽で、未成熟の雄1個体を対象に実施した。2024年8月6日から8月9日にかけて行動記録計を装着し、遊泳速度・遊泳深度・水温を1Hz、3軸加速度・地磁気は20Hzで測定した。通常、給餌は1日2回決められた時間に行われているが、8月8日のみ行われなかった。遊泳速度、尾びれ振動周期および活動量(ODBA)を指標として日中と夜間の遊泳行動の変化を評価した。また給餌時間帯の行動に注目し、変化点分析により給餌中と給餌前の行動に分離して各指標を比較した。水槽内水温は24.9±0.1℃であり、照明の点灯中を日中、消灯中を夜間とした。日中の遊泳速度は0.76±0.23m/s、夜間は0.37±0.10m/sと日中の方が高かった。日中の尾びれ振動周期は3.0秒程度であり、夜間は5.0秒程度まで長くなっていた。日中のODBAは0.084±0.046G、夜間は0.049±0.015Gと日中の方が高かった。また給餌の有無に限らず、給餌前の約50分間に各パラメータは特に高くなった。この活動量の高い行動は給餌時刻を予測した行動であると考えられた。これらの結果、本個体は昼行性の概日リズムを持つとともに、給餌時刻を学習していることが示唆された。無給餌日にも本来の給餌前から活動量が高くなり、餌がないにも関わらず活動量が高いまま日中を過ごしたため過剰なエネルギーを消費していた。日中の決められた時刻に給餌する場合には、その継続が本種の飼育と成長維持に必要だと示唆された。