| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-122  (Poster presentation)

異なる発育時温度がオオツノコクヌストモドキの外部形態に与える影響【O】
Effect of temperature on sexual size dimorphism during the developmental period in the broad-horned flour beetle【O】

*松村健太郎(東京大学), 山本悠渡(香川大学), 吉村開人(岡山大学), 宮竹貴久(岡山大学)
*Kentarou MATSUMURA(The University of Tokyo), Yuto YAMAMOTO(Kagawa University), Kaito YOSHIMURA(Okayama University), Takahisa MIYATAKE(Okayama University)

変温動物である昆虫の成体サイズは一般に発育時の温度に依存する。発育時温度と成体サイズがトレードオフとなる現象を温度―サイズ則と呼ぶ。この温度―サイズ則に一致する例は様々な昆虫種において報告されているが、性選択によって進化した雄の武器形質や性的サイズ二型に対する発育時の温度が及ぼす影響については不明瞭なままである。そこで本研究では、オオツノコクヌストモドキ(Gnatocerus cornutus)を用いて、発育時の温度の違いが成体の性的形質サイズへ及ぼす影響を調査した。オオツノコクヌストモドキにおいて、雄は雄間闘争で用いる顕著に発達した大顎を持っており、またその他の形態サイズにおいても雄の方が雌よりも大きい性的サイズ二型を示す。このオオツノコクヌストモドキの幼虫を、20℃、25℃、30℃で維持されたインキュベーター内でそれぞれ飼育した。その結果、計測した多くの形態は、温度―サイズ則に従うことが明らかになった。さらに、雄間闘争で用いられる大顎サイズや頬幅において、低温で発育した個体の方が高温で発育した個体よりも性的サイズ二型性の度合いが大きいことが明らかになった。この研究結果は、温度-サイズ則が性選択により進化した形態サイズにも影響を与えることを示唆した。


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