| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-123 (Poster presentation)
ほとんどの海産巻貝は右巻きである。そのため、カラッパ属などの貝食性カニ類の多くでは、右巻きの貝殻を破砕するのに効率の良い、特殊化あるいは大型化した右鉗脚をすべての個体がもっている。しかし、ガザミなどの一部の貝食性カニ類では、右鉗脚を発達させた個体(右型個体)のみならず左鉗脚を発達させた個体(左型個体)が集団中に共存する状態(左右二型)が維持されている。そうした貝食性カニ類の集団において、右型の単型にならずに左右二型が維持される機構は、解明されていない。鉗脚の左右二型が維持されるためには、左型の適応度が右型のそれを上回る、何らかの条件が存在している必要がある。そこで我々は、貝食性カニ類では右型と左型で餌生物が異なっており(左右二型が栄養多型 trophic polymorphism の関係になっており)、餌生物群集の種組成が時空間的に変動することによって左右二型が維持されているという独創的な仮説を考案した。本発表では、この仮説を炭素・窒素安定同位体比解析によって検証した結果を報告する。