| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-128  (Poster presentation)

関東圏都市部におけるヘビ類の生態と形態的変異【A】【O】
Snake ecology and morphological variation in the urban area of the Kanto【A】【O】

*小林幸平(新潟大院), 阿部晴恵(新潟大学)
*Kohei KOBAYASHI(Grad Sch S.T, Niigata Univ.), Harue ABE(Niigata Univ.)

 都市生態系は、通常の自然生態系とは異なる生物相や空間的異質性をもつことから、生物に強い選択圧を与える。そのため、本来とは異なる形態や生活史を獲得したことで都市環境に適応した種も存在する。また、都市部では、人間の感性や認知的反応も生物の形態や行動などに影響を与えることが示唆されており、都市生態系における生物の適応や進化を真に理解するためには、人間を含めた種間相互作用を理解する必要がある。そこで本研究では、人間との関係性が強いヘビ類に着目し、都市の選択圧と人間の認知的反応がヘビ類の形態や生態に及ぼす影響を解明することを目的とした。本研究では、シマヘビとアオダイショウを対象種とし、体サイズと頭部形態の変異について、都市部と農村部にて比較を行い、これらの要因となる、食性と捕食圧について調査を行った。さらに、人間の認知的反応がヘビ類に与える影響を評価するために、ヘビ類に対する印象や態度に関するアンケート調査を行った。
 調査の結果、都市部では、両種ともに体サイズや頭部形態に変異が確認され、利用可能な餌資源が限定されることによる、食性を起因とした共通の変異パターンが確認された。しかし、シマヘビでは餌サイズや採餌効率により、体サイズや頭部形態が大型化または小型化する場合といった、変異の方向性に差異が確認された。さらに、人間の生活環境や後天的な経験の違いにより、ヘビ類に対する認知的反応に差異が検出され、特に農村部では、ヘビ類に対する嫌悪感や攻撃的態度が強い傾向がみられた。これらの反応は、都市生態系を含む様々な地域環境において、ヘビ類の生存率や繁殖活動などの適応度に影響を与えることで、体サイズや行動パターンなどに変異を及ぼす可能性が考えられる。以上より、ヘビ類に関する食物連鎖を通じた生物学的な要因と人間との相互作用に関する社会学的な要因から、都市におけるヘビ類の生態や形態的変異について議論する。


日本生態学会