| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-129  (Poster presentation)

北海道に定着した外来種ニジマス:生活史形質にどのような河川間変異があるのか?【O】
Established non-native rainbow trout in Hokkaido: what kinds of inter-river variations exist in life history traits?【O】

*佐橋玄記(水産研究・教育機構), 森田健太郎(東京大学大気海洋研)
*Genki SAHASHI(FRA), Kentaro MORITA(AORI, University of Tokyo)

サケ科魚類のニジマスは、世界中の河川に広く外来種として定着しており、IUCNの「世界の侵略的外来種ワースト100」にも選ばれている。そのため、ニジマスが在来種に与える負の影響などについて、数多くの研究で調べられてきた。しかし、定着先の生息環境に応じた生活史形質の変異を調べ、高成長や高い繁殖力をもたらす環境を把握することは、外来種を適切に管理するために重要な取組の一つであるが、ニジマスではそのような研究は少ない。本研究では、北海道の24河川で2009個体を採捕し、外来種として定着したニジマスの生活史形質の河川間変異とその要因を検討とした。

水温が高い河川ほど、ニジマスの成長が良く、卵サイズが小さかった。一方、水温が高い河川ほど、生息密度が低いという傾向は見られなかった。また、ダム湖などの回遊先が存在する河川で成熟個体の体サイズが大きく、初期成長の良い河川で若齢成熟した。一般に、卵数は成熟個体の体サイズが大きく、卵サイズが小さいほど増加するため、水温が高く、ダム湖などの回遊先が存在する河川で高い繁殖力を示すと考えられる。気候変動に伴う水温上昇と人間活動に伴うダム湖の出現は、ニジマスの成長と繁殖力に対してプラスに作用するかもしれない。


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