| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-135 (Poster presentation)
捕食や被食、競争といった生物間相互作用は、鳥類の営巣場所を決定する主な要因である。なかでも捕食(餌の確保)は、雛の成育に不可欠なだけでなく、餌が不足すると巣立ちの遅延や天敵への警戒時間の減少を引き起こすことで雛の被食リスクを高めうる。モズ属の鳥類は、海鳥などに比べ一度に運搬できる餌量が少なく採餌行動圏が狭いため、営巣場所の選択は近傍の餌の利用可能性により強く依存すると考えられる。そこで本研究では、チゴモズを対象に、最適採餌や中心点採餌理論に基づいて繁殖ペアの餌利用可能性を推定したマップを作成し、マップが営巣適地を示すか検証することを目的とした。
まず、チゴモズの各繁殖ペアの餌の利用可能性を①サイトにおける採餌1回あたりに得られる餌量(採餌効率)と②採餌サイトへの来訪頻度(巣からのアクセス効率)の積和と定義した。次に、これらデータ取得のため、2022~2024年の5~7月に山形県庄内地方において巣を捜索し、定点観測により親鳥の採餌サイトを特定し来訪頻度を記録した。また、巣へ運搬された餌をビデオ録画し、餌サイズと分類群に基づいて餌量(カロリー換算値)を定量化した。さらに、時刻等をもとにサイトと餌量を紐づけ、各サイトの餌資源量を周辺植生で説明する統計モデルと、サイト来訪頻度を餌資源量の期待値と巣からの距離で説明するモデルを作成した(ペア:N=5)。最後に、これらモデル期待値の積和による、巣の在/ランダム地点(1/0、在:N=31)分離能力をAUC値により定量化した。
その結果、周辺約1.3km内に広葉樹や草本が多く、20m内が樹木やリターに被覆されているサイトで採餌効率が高いと推定された。前者は餌動物の生息環境、後者は見通しの良い止まり木で待ち伏せる本種の採餌スタイルを反映していると考えられる。AUC=0.66より、これら植生の形成されやすい、二次遷移の進行と適度な農地管理の織りなす景観が、本種の営巣適地であると示唆された。