| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-140 (Poster presentation)
生物の資源投資戦略の進化を促す重要な要因として、寿命は多くの生物で研究されてきた。しかし、実験室環境と比較して、自然環境での寿命に関する情報は不足している。特に昆虫では、実験室環境での寿命が自然環境の約2倍に達するという報告があるが、両環境で寿命を直接比較した研究は少ない。本研究では、実験室環境下と自然環境下でのカブトムシの寿命を比較した。実験室環境下では、水のみで約50日、十分な餌で約140日生存した。一方、標識再確認法で推定された野生個体群の平均寿命は、多くの個体群で1日未満であった。これらの結果は、実験室環境と自然環境での寿命の乖離が昆虫において一般的であることを示唆している。水のみの給餌でさえ、野生個体の2倍以上の寿命を示したことは、餌条件以外の要因が自然環境で強く寿命に影響することを示唆している。本種はカラスやタヌキによる高頻度の捕食を受けていた。短命下の背景には、酸化ストレスなどの内因性要因に加えて、捕食圧などの外因性要因が強く寄与していると考えられる。