| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-148  (Poster presentation)

都市緑地の鳥類種子散布ネットワークに影響を及ぼす要因【A】【O】
Factors affecting bird seed dispersal networks in urban green spaces【A】【O】

*湯天禹(東京大学)
*Tianyu TANG(Tokyo University)

 鳥類と植物の種子散布相互作用は、鳥類が資源を獲得すると同時に、植物の種子散布を助け、種多様性の維持に寄与する重要なプロセスである。鳥類による種子散布は採食と散布の2つのプロセスから成り、前者が果実選好で決定され、後者が採食後の種子の運命に影響を与える。多様な鳥類と植物の種子散布相互作用はネットワークとして表現され、生息地の景観構造の影響を受ける。特に都市緑地では、人為的な土地利用が相互作用ネットワークに顕著な影響を与える。しかし、都市化による景観構造の変化が鳥類の種子散布ネットワークに及ぼす影響は解明されていない。そこで、本研究は、都市緑地の鳥類種子散布ネットワークに影響を及ぼす景観構造の要因を評価することを目的とした。
 東京都内13カ所の都市緑地において、2023年4月から2024年2月にかけてトランセクト法で鳥類の糞便と散布された種子を採取し、鳥類種と植物属を特定した。得られたデータを基に採食と散布の多層ネットワークを構築し、相互作用密度、平均経路長(APL)、中心性、モジュール性を指標として解析した。また、緑地面積と断片数、夜間光レベル、人流量、都心距離などの景観指標を取得し、GLMによりネットワーク構造との関係を分析した。回帰分析を用いて、鳥類の果実選好性と種子散布量の関係を解明した。
 その結果、景観構造の都市化(夜間光レベルの上昇、緑地面積の縮小、断片数の増加)に伴い、種子散布ネットワークはより分散的で単純な構造に変化した。また、鳥類の採食プロセスは散布プロセスに正の影響を与え、他の種子散布様式が限られる都市緑地では、この影響により元来の植物多様性が低い緑地で鳥類散布種が優占する可能性が示唆された。したがって、都市化が進んだ地域では、広大で連続性があり、元来の植物多様性が高く、夜間光の影響が少ない緑地が、鳥類-植物相互作用の多様性維持に重要な役割を果たしており、重点的な保全が求められる。


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