| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-149  (Poster presentation)

八代海の海草藻場における魚類群集構造の時空間変動パターン【A】【O】
Pattern of spatiotemporal variation in fish community structure in seagrass beds at Yatsushiro Bay, Kyushu, Japan【A】【O】

*山平茜莉(熊本大学), 飯盛時生(熊本大学), 逸見泰久(熊本大学), 吉野健児(国水研), 山田勝雅(熊本大学)
*Akari YAMAHIRA(Kumamoto Univ.), Tokio ISAKARI(Kumamoto Univ.), Yasuhisa HENMI(Kumamoto Univ.), Kenji YOSHINO(NIMD), Katsumasa YAMADA(Kumamoto Univ.)

沿岸浅場に繁茂する海草seagrassは,様々な生態系機能を有するため,多様な動物群が蝟集する.特に魚類にとっては,成育場や採餌場などの役割を果たすことが知られる.魚類の群集構造は場所や季節などによって異なるが,その相違には海草の立体構造や餌量や競争などの生物的要因や水質などの非生物的要因などの多くの要因が交絡して影響することで群集構造が決定されていると考えられる.特に,魚類の生息場となる海草の繁茂は,季節に応じて増減する.その増減は魚類群集構造の決定に強い影響を与えていることが推察される.本研究は,八代海(熊本県)の海草場に蝟集する魚類群集構造の時空間変動を明らかにするとともに,季節的な海草の衰退とそれぞれの出現魚種間の生息場利用様式の違いを比較することで,海草場の生態的構造 (ecological structure) が生態的機能 (ecological function)に与える影響を評価した.
アマモ場に蝟集する魚類群集構造の時空間変動を明らかにするために,2024年3季節(春夏秋)に,八代海のアマモ場4地点において地引網を用いて魚類を定量採集した.採集された魚類は同定・計数を行い,各個体について体長・湿重量を測定した.また,生息場環境を評価するために,海草の立体構造,水質,底質もそれぞれ測定した.魚類の摂餌動物群である小型無脊椎動物群についても定量採集し,魚類群集動態を説明する変数とした.
海草(アマモ)はその生活史に従い,春から秋にかけて衰退し,場所によっては秋季にはアマモ場が消滅する場合もみられた.対応するようにアマモの立体構造の魚類群集構造に対する説明力は季節的に低下した (RDA).一方で,餌となる小型無脊椎動物群は,アマモの衰退とは逆に魚類群集構造に対する説明力が季節的に上昇した.これは,アマモが衰退後の砂泥に残るベントス種を好む底魚魚種が蝟集したためと考えられる.アマモの立体構造は直接的にも間接的にも魚類の群集構造の主要な決定要因であることが示唆された.


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