| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-154  (Poster presentation)

ツリガネニンジンの送粉者に及ぼす影響:送粉者相、開花期、島と本土間の比較【A】【O】
Factors influencing the pollinators of Adenophora triphylla var. japonica【A】【O】

*熱方悠人(新潟大学), 岡崎純子(大阪教育大学), 水澤玲子(福島大学), 阿部晴恵(新潟大学)
*Yuto ATSUKATA(Niigata Univ.), Junko OKAZAKI(Osaka Kyouiku Univ.), Leiko MIZUSAWA(Fukushima Univ.), Harue ABE(Niigata Univ.)

ツリガネニンジンAdenophora triphylla var. japonica の釣鐘状の花は送粉シンドロームではハナバチ媒花だが、本州集団では夜行性ガ類が主要な送粉者として知られている(船本 2021)。一方、伊豆諸島の三宅島ではハナバチが主要な訪花昆虫であり、送粉者シフトの可能性が指摘されている(岡崎ほか 未発表)。島嶼と本州では景観や花期が異なり、送粉者相が変化する可能性がある。さらに、隔離の影響で送粉者相が単調化し、自殖により繁殖補償を行っている可能性がある (Inoue 1993)。また、伊豆諸島ではムカデ類などの夜行性花上捕食者が多く、夜間に訪花するガ類への影響が考えられる。以上の背景から、伊豆諸島の新島・式根島・神津島及び本州の伊豆半島集団、日本海側島嶼集団の佐渡島で(1)季節間の送粉者相の比較、(2)ガ類相の単調化の検証、(3)蜜分泌時間帯の比較、(4)自殖能力の検証を行った。さらに、(5)神津島・新島産花上捕食者の胃内容物の特定のためDNAメタバーコーディング解析を行った。
(1)いずれの調査地でも昼夜のハナバチ類やガ類等の訪花があり、ツリガネニンジンはジェネラリスト種であるが、夏にはハナバチ類、秋にはガ類が多く、送粉者相の季節性が示された。海岸草原に生育する神津島と式根島では海岸性のハナバチ種やツチバチ種の訪花が卓越した。以上から、景観と開花期が送粉者相を規定する要因であると推定された。(2)島嶼におけるガ類相の明瞭な単調化は示されなかったが、式根島と神津島ではヤガ科類の訪花が少なかった。(3)花蜜は伊豆諸島では先行研究の三宅島と同様に昼間に分泌を開始した。(4)自殖能力は神津島集団のみならず伊豆半島や佐渡島でも確認され、潜在に有する能力である可能性が示された。(5)花上捕食者は島嶼の海岸個体のみで観察され、胃内容物からはガ類や花序捕食者の直翅目が検出された。


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