| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-156 (Poster presentation)
種子が動物の体表に付着することで運ばれる付着種子散布では、実際に散布に関与している動物種が多いと考えられるのに反して、付着散布を介した実際の種間関係を記録することは難しく、既存研究は調べやすい家畜が主な対象動物として限定されてきた。我々は、ロードキル個体の体表に付着した種子を採取することで、多くの動物種を対象に、付着種子散布の種間ネットワークを記録できると考えた。本研究の目的は、付着種子散布を介した植物と動物の実際の種間関係を明らかにすることである。富山県内で2006年から2023年の期間に収集した哺乳類のロードキル14種200個体の体表を調べ、付着していた種子を収集した。その結果、9種42個体の哺乳類から、13種269個の種子が見つかった。動物種ごとには、ロードキルの収集数、付着種子の発見率ともにタヌキが最も高かった。最も頻繁に種子が付着していた植物種はイノコヅチだった。種子の付着は年間を通して確認されたが、特に秋に種子が付着した検体数が多かった。これは、付着散布植物の種子が結実する時期と一致しており、植物種の結実フェノロジーを反映していると考えられる。本研究の結果は、ロードキル個体から、付着種子散布における植物と動物の種間ネットワークの情報が得られることを初めて示した。今後は、この手法を活用し、付着種子散布の知見がさらに蓄積されることが望まれる。