| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-157 (Poster presentation)
野生ハナバチの生態調査が、定期採集調査により1970年代頃から日本各地で行われてきたものの、調査は山間や大学構内、公園などに限られている。本研究では町田市の市街地内で観察による野生ハナバチの生態調査を行い、その特徴を明らかにすることを目的とした。調査は人口地形の上にある町田木曽住宅(団地)周辺と本来の地形が残る忠生公園の2か所で行った。晴れの日に団地周辺と忠生公園内のそれぞれで特定のルートを歩き、ハナバチを見つけ次第、ハナバチと花それぞれの種と数を記録した。結果は、団地周辺ではミツバチ科が最も観察され、中でもセイヨウミツバチとニホンミツバチが上位であった。両種の蜜源の類似度は高く、セイヨウミツバチが市街地のハナバチ相に影響を与えている。また、訪花を受けた植物上位13種のうちの6種は団地下の草原に生育する植物種であったことから、団地下の草原の花が重要な蜜源であることが団地のハナバチ群集の特徴である。団地の草刈りの前後でハナバチ個体数が増加した場合があったことから、草刈りのある時期でも十分な量の蜜源が存在していた。草刈り後である6月上旬には、アベリアへの訪花個体数が全訪花個体数の60%以上となったことから、草刈り後の蜜源として特に重要な花はアベリアである。忠生公園のハナバチ群集では、8月下旬から9月下旬の間にのみハナバチ個体数が団地よりも多い場合があった。この時期に忠生公園ではキツネノマゴなどの野草が主に利用されていた。ハナバチは市街地において、団地の並ぶ場所の蜜源を植栽の植物も含め利用しつつ、忠生公園に生育する野草の蜜源が特に重要になる時期もある。開発する土地だけでなく、景観を構成する他のタイプの生態系を考慮して開発を進めることで、土地利用が頻繁に大きく変化しやすい市街地であっても、様々な土地利用のある環境にまたがって生息している生きものと共存していくことができるであろう。