| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-159  (Poster presentation)

里山林床における刈り取りレジームの違いによる節足動物群集と土壌生態系機能の変化【A】【O】
Changes in arthropod communities and soil ecosystem functions due to mowing regimes in Satoyama understory vegetation【A】【O】

*CHENZiyan(横浜国立大学), 岩知道優樹(横浜国立大学), 山梨満里奈(横浜国立大学), 有馬一(横浜市緑の協会), 佐々木雄大(横浜国立大学)
*Ziyan CHEN(Yokohama National Univeristy), Yuki IWACHIDO(Yokohama National Univeristy), Marina YAMANASHI(Yokohama National Univeristy), Toru ARIMA(Yokohama Greenery Foundation), Takehiro SASAKI(Yokohama National Univeristy)

 里山生態系で、近年の人口減少などに伴う管理放棄の増加が、生物多様性だけでなく土壌の生態系機能にも影響を及ぼしている。これまでの研究で継続的な管理活動の重要性は示されてきたが、その多くは生物多様性の保全に焦点をあてたものであった。しかしながら、管理放棄された里山において、再度管理を行うことが、土壌の分解機能や、それを担う土壌節足動物群集にどのような影響を与えるかについては、ほとんど明らかにされていない。
 本研究では、管理活動が節足動物と分解機能への影響を明らかにするために、横浜動物園において2023年4月から定期的な刈取り計画を実施し、2024年8月に地表徘徊性節足動物と土壌を採集した。刈取り計画では、刈取り頻度(0回/年、1回/年、2回/年)と刈取り強度(刈り高0cm、10cm、10cm+落ち葉掻き)を設定し、対照区(放棄地)と比較した。また、分解機能(分解速度)は、木材ブロックを1年間設置し、質量減少量を指標として測定した。採集した節足動物を種レベルで同定し、shannon多様性および個体数を算出した。
 研究の第一段階として、「年2回、刈り高10cmの刈取りが節足動物の多様性および個体数を最大化する」「落ち葉掻きで節足動物の多様性および個体数が減少する」という仮説を設定した。結果として、多様性には有意な変化が見られなかったが、放棄地よりも「刈り高10cm+落ち葉掻き」で個体数が有意に低いことのみが確認された。このことから、節足動物の個体数は主に食物資源の変化に影響を受け、個体数の変動は多様性よりも早く刈取り計画へ反応する可能性が示唆された。一方で、多様性の変化を明確に捉えるには長期的な調査が必要である。
 また、本発表では、研究の第二段階として、分解機能に関する予備的な結果も報告する。今後は刈取り計画を継続し、節足動物群集の変化を追跡するとともに、森林の有機物分解機能への影響についても評価を進める予定である。


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