| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-160  (Poster presentation)

果実形質から見たカラス属の種子散布における果実選好性【A】【O】
Fruit preference in seed dispersal by Crows and its relationship to fruit traits【A】【O】

*島田将吾(新潟大学), 直江将司(森林総合研究所), 柴田嶺(新潟大学)
*Shogo SHIMADA(Niigata Univ.), Shoji NAOE(FFPRI), Rei SHIBATA(Niigata Univ.)

 カラス属は温帯における種子散布者では数少ない大型鳥類であり、小・中型の散布者鳥類とは異なる機能を持つ可能性がある。散布者としての機能を評価する上で果実選好性は重要な情報である。ウルシ科等一部果実を好むことが報告されているが、どのような果実を選好しているかを定量的に評価された研究は少ない。以上より、本研究では1)果実採食量と果実資源量の比較による選好性の有無2)樹高、結実時期、果実形質が選好性に与える影響の2つを明らかにすることを目的とした。

 2023年5月から2024年4月にかけて新潟大学農学部および隣接する建物の屋上にてハシブトガラスとハシボソガラスのフンとペリットを採取し、含有される種子から年間の果実採食量を算出した。農学部から半径2kmのエリア内に設定した71本の長さ50m幅3mの調査ルートにて各植物種の被覆面積を調査し、果実資源量の指標とした。併せて植物高も記録した。被覆面積の大きかった20種の果実を採取し、果実径や色などの形質を記録した。選好性の評価については、果実採食量と果実資源量から算出するIvlevの選択性指数を用い、0を超えていた場合に選好性が高いと判断した。また、選択性指数と植物高、果実形質との間のスピアマンの順位相関係数を算出した。

 選択性指数が0を大きく超えている種(ハゼノキ、コブシ等)と大きく下回っている種(アオツヅラフジ、シャリンバイ等)がみられ、カラスは果実に選好性を持つと考えられた。また、植物高と選択性指数には弱い正の相関がみられ、植物高が大きいほど選好されやすい傾向がややあると考えられた。植物高が大きいほど大型のカラスにはとまりやすいためだと考えられる。しかし、冬に結実するマサキやツルウメモドキは植物高が低いにも関わらず選択性指数が高かったことから、結実時期も選好性に影響すると考えられた。選択性指数と果実形質の相関係数は小さく、果実形質が選好性に与える影響は小さいと考えられた。


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