| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-162  (Poster presentation)

植物が埋もれたいのは誰の糞?:野生哺乳動物の糞に応じた種子の発芽・生長【A】【O】
Which animal's droppings do plants prefer to be buried in? Differences in seed germination and growth among the feces of wild mammals【A】【O】

*西田拓翔拓翔(近畿大学・農), 土井具汰(近畿大院・農), 安田彩人(近畿大院・農), 平岩将良(近畿大学・農), 澤畠拓夫(近畿大学・農), 早坂大亮(近畿大学・農)
*Takuto NISHIDA(Fac.Agric.,Kindai Univ.), Kutta DOI(Grad.Sch. Agric.,Kindai Univ.), Ayato YASUDA(Grad.Sch. Agric.,Kindai Univ.), Masayoshi HIRAIWA(Fac.Agric.,Kindai Univ.), Takuo SAWAHATA(Fac.Agric.,Kindai Univ.), Daisuke HAYASAKA(Fac.Agric.,Kindai Univ.)

動物を介した種子散布戦略のひとつに,摂食された種子の排泄物(糞)を介した散布,すなわち周食型散布が挙げられる.周食型散布は動物を介した種子散布のなかでも,植物と動物の共進化・共生関係の結果と考えられる要素が多く,この散布形態に対応した植物種は数多く存在する.このことから,周食型散布は生態系において非常に重要とされる.周食型散布を行う動物のなかでも,中・大型哺乳類は,行動圏や食性の広さから多様な種子の運び屋として機能する.種子散布における周食型散布の生態学的意義を解明すべく,これまで糞内の種子(埋糞種子)組成や散布距離などの研究がなされ,生態系の安定性や多様性維持における役割が議論されてきた.しかし,植物の生存や繁殖において,種子の発芽や実生の生長は非常に重要な生活史段階であるにも関わらず,動物の糞が埋糞種子の動態にどのような影響をおよぼすのかについては,これまでほとんど議論されていない.一例として,偶蹄類の糞で草原性植物の生長量は増加するが,植物の応答量は偶蹄類の糞間で異なるといった報告がある程度である.生態系内における周食型散布種子の生存および定着戦略の全容を解明する上で,各動物種の排泄物の特徴の理解は欠かせない.その場合,さまざまな哺乳類を対象に調査を行い,各排泄物(糞)に対する植物の応答(発芽率や初期生長量)を網羅的に評価する必要があるだろう.そこで,周食型散布者として有益とされる複数の中・大型哺乳類を対象に,奈良県内で9種類の動物の糞(目レベルで分類)を採取し,各動物の糞に対する植物の発芽および初期生長を比較した.なお,本研究では一年生草本植物の中でも栄養応答が非常に早く実態が見易いことからモデル植物としてエン麦を用いた.試験の結果,食肉目類(キツネ,テンなど)の糞で,エン麦の生長に正の影響が見られた.本発表ではこの結果について報告する.


日本生態学会