| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-168 (Poster presentation)
現在、世界的に進行している都市化は、動物群集の多様性や種組成を変化させ、種間相互作用にも影響を及ぼすと考えられる。相利的な種間相互作用の例として動物による種子散布や花粉媒介が挙げられる。これらは、植物の生存と拡散に不可欠な相利的相互作用であり、重要な生態系サービスの一つである。一般的に都市化によって動物の多様性が減少することが知られており、また花粉媒介の機能が低下しうることが明らかとなっているが、種子散布において散布者の種数や個体数がどのように変化するのか、その結果、種子散布プロセスがどのように変化するのかは十分に解明されていない。
本研究では、都市化によって種子散布者の種数・個体数がどのように変化し、それに伴って種子散布プロセスがどのように変化するのかを明らかにするために、鳥散布樹木エノキ(Celtis sinensis)と、その主な種子散布者である鳥類との関係について調査を行った。2024年の夏から冬の期間に、大阪府北部の市街地から山地にかけて、結実したエノキ44個体を直接観察し、鳥類との相互作用を記録した。鳥類は体サイズによって果実を食べる量や行動範囲、体内での種子の滞在時間が異なり、種子散布能力が異なるため、体サイズごとに滞在時間や訪問回数を比較した。またこれらの地域において30箇所のポイントを設置し、ポイントセンサスで鳥類群集を調査した。
その結果、都市化強度の増加に伴い、エノキを訪問し果実食を行った鳥類の多様性は減少していたが、訪問個体数は増加していた。また都市化強度に比例して、周辺に生息する鳥類の種数も減少したが、体サイズが大きく種子散布において重要な役割を果たすと考えられるカラスの個体数が増加し、そのエノキ訪問頻度も増加する傾向が見られた。このことからエノキでは、都市化によって鳥類の種多様性が減少したとしても、その種子散布、特に大型鳥類による遠距離散布が強められる可能性が示唆された。