| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-169 (Poster presentation)
生物群集において、捕食者の採餌行動、特に採餌場所選択について明らかにすることは、群集内での捕食者のふるまいを予測でき、下位の栄養段階の生物群への影響を考えるうえで非常に重要である。陸上生態系における主要な捕食者であるクモ類は、多くが待ち伏せ型の採餌を行うため採餌場所選択の研究対象に適している。花・花序上を採餌場所とする訪花性クモ類は、送粉者を捕食し、その訪花を妨げることで、送粉者や開花植物へ影響を及ぼしうるが、訪花性クモ類の群集内での採餌場所選択を調査した研究はほとんどない。本研究では、訪花性クモ類が採餌場所とする植物の特徴を解明するために、各植物種への送粉者の訪花頻度・組成および開花量・花形態の訪花性クモ類の採餌場所選択に与える影響、また他クモ類との採餌場所とした植物種の非類似性を検証することを明らかにすることを目的とした。具体的には、調査区で開花していた植物種ごとの開花量、花形質(花筒長)、花・花序に滞在していたカニグモ類と造網性クモ類の個体数、そして送粉者の訪花数を分類群ごとに記録したデータを基に、訪花性クモ類の植物種選好性に対する送粉者の訪花頻度・組成、開花量、花形態の影響を解析した。また、カニグモ類では、種・属間の利用した植物の非類似性を解析した。解析の結果、カニグモ類および造網性クモ類は訪花頻度のより高い花で有意に多く観察された。カニグモ類はハエ目昆虫が主な送粉者である花で有意に多く観察されたが、造網性クモは送粉者相の影響がみられなかった。また、花筒長はカニグモ類及び造網性クモ類の数へ影響を与えていなかった。そして、ハナグモ、コハナグモ、およびカニグモ属の間で利用した植物種の組成に有意差はなく、種間の使い分けはみられなかった。これらの結果を踏まえて、訪花性クモ類の採餌場所選択に影響を与える要因について議論をおこなう。