| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-171  (Poster presentation)

カシノナガキクイムシの寄主木への飛来のしかた【A】【O】
The way the oak ambrosia beetle approaches its host trees【A】【O】

*青山尊(京都大学), 伊東康人(兵庫農技総セ), 山崎理正(京都大学)
*Takeru AOYAMA(Kyoto Univ.), Yasuto ITO(Hyogo Pref. Tech. Cent.), Michimasa YAMASAKI(Kyoto Univ.)

一般に昆虫の寄主探索過程は複数段階で構成され、各段階で異なる情報・感覚が関与している。樹木病原菌を寄主木に持ち込みナラ枯れを引き起こすカシノナガキクイムシ(以下、カシナガ)は、幼虫期を過ごした寄主木から羽化脱出後飛翔し、飛来した林分で新たな寄主木を探索し、寄主木の候補に接近・着地後、穿孔場所を探索し、穿孔する。本研究ではこれらの過程のうち、接近・着地の段階に影響する要因の解明を目的とした。ナラ枯れ被害が進行中の兵庫県宍粟市の二次林で、20×20mのプロットを3つ設置し、ブナ科のコナラ・アベマキ・アラカシを調査対象木とした。対象木41本の地際に粘着トラップ(以下、粘着)を、樹幹沿いに約4mごとに衝突板トラップ(以下、衝突板)を計161個設置し、2024年7月から11月まで16回、約1週間ごとに回収と交換を繰り返して捕獲数をカウントした。粘着での捕獲確率・捕獲数に影響する要因として、経過日数・各プロットの樹冠密度・粘着の直上の樹冠密度・衝突板での捕獲数・トラップ設置木の胸高断面積・樹種を設定し、ハードルモデルで解析した。粘着での捕獲数は計3163頭、衝突板での捕獲数は計1906頭となった。モデル選択の結果、経過日数と樹冠密度は捕獲確率と捕獲数の両方に影響していた。捕獲確率には樹幹沿い18ⅿ以内の衝突板の捕獲数が影響していたのに対し、捕獲数には樹幹沿い6ⅿ以内の衝突板の捕獲数が影響していることが明らかになった。粘着での捕獲確率はカシナガによる初期加害段階、捕獲数は集中加害段階を反映しているとすると、これらの結果は初期加害の段階では上から飛来するが集中加害の段階では低所に集中することを示していた。胸高断面積は捕獲確率にのみ影響し、カシナガは初期加害の段階で太い木を選好していると考えられた。樹種間差は検出されず、接近や着地の段階では樹種識別していないことが示唆された。


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