| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-173 (Poster presentation)
植物には新葉が赤や紫などの赤系の色を呈する種類が数多く知られている。この新葉の赤い色は新葉が有害な防御物質を含んでいることを示す植食者に対する警告色であることが近年わかってきた。警告色に対する動物の反応は学習によって獲得される場合と生得的に持っている場合とがあるが、新葉の赤や紫色に対する反応がそのどちらであるかはわかっていない。そこで、赤い葉を食べた経験によって葉の色に対する好みが変化するかどうか、サツマイモの害虫であるヨツモンカメノコハムシを用いて調査した。孵化直後から緑色の葉のみを与えて育てた成虫と紫色の葉のみを与えて育てた成虫を用意し、紫と緑の葉を選択させる実験を行った。選択実験ではサツマイモの品種安納芋の新葉(紫)と成葉(緑)、ベニアズマの新葉(黄緑)と成葉(緑)を直径15 mmの円形に切り抜き、各一枚計四枚をシャーレに入れ、白色光の下で成虫一匹に五時間摂食させた。その後、残った葉の面積を測定し、摂食された面積を調べた。対照実験として、青色光下と暗黒下でも同じ実験を行った。その結果、緑の葉で育てた成虫は色覚によって葉の選り好みをし、緑の葉を食べて紫の葉を避けた。一方、紫の葉で育てた成虫は紫の葉と緑の葉の間で明確な好みを示さなかった。本種は食べた経験がなくても緑の葉を避けなかったことから生得的に緑の葉に対する好みがあり、単に紫の葉が新奇だから避けるわけではないと考えられた。