| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-175 (Poster presentation)
複数の花を持つ植物は、開花数の決定において、訪花者誘引と自殖に関わるジレンマを抱えている。同時開花数を大きくすれば、訪花者を効率的に誘引することができる。しかし、同時開花数を大きくすれば、訪花者の個体内訪花も増え、自殖率が高まってしまう。ゆえにその開花数は、総花数と1花の間の中間的な値を取ると考えられる。しかし、複数種が訪花者をめぐって競争を行う場合には、ある種が開花数を減らせば、訪花者が他の種に誘引されてしまう。そのような条件において、中間的な同時開花数が進化するかは定かではない。
そこで本研究では、1種のみが生育する場合と2種の競争下での訪花者による送受粉を考えた数理モデル内で、植物種2種の間での訪花者をめぐる種間競争を再現して世代変化のシミュレーションを行い、競争下での形質の進化を1種のみが生育する場合と比較した。シミュレーションにおいては、訪花者の存在する期間の長さや近交弱勢などのパラメータを上下させ、各条件における最終的な同時開花数を記録した。
現在までのシミュレーションの結果、1種のみが生育する場合では同時開花数は中間的な値で安定し、2種共存環境では同時開花数の大きい種と小さい種に分かれる傾向が見られた。また、訪花者存在期間が長いほど2種の開花数の差が大きくなる傾向が見られ、これは二種の開花時期の重複を減らす方向に進化が起こったためであると考えられる。これらの傾向は、近交弱勢が高いほど顕著であった。