| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-179 (Poster presentation)
動物による食害では、周辺植物によって標的植物の食害のされやすさが変化する現象(連合効果)が知られている。連合効果には、周辺植物により標的植物が食べられにくくなる効果と、食べられやすくなる効果がある。そのほか、周辺植物の存在により、標的植物の食害が希釈される効果も考えられる。ノウサギによる植栽木食害は、稚樹の成長を阻害することから重要な課題であり、ノウサギにおける連合効果を明らかにすることで、食害を減らすことができるかもしれない。
本研究は、ノウサギにおける稚樹の食害に対する連合効果を明らかにすることを目的とし、松枯れ後に伐採および広葉樹植栽したプロット(n=5)で、2023年11月から1年間実験を行った。植栽方法は、標的木をカスミザクラ(嗜好性) とカシワ(不嗜好性)として、周辺に嗜好性木(ガマズミ・ナツハゼ)または不嗜好性木(コマユミ・サンショウ)を植えた。また、周辺木の密度は、高密度、低密度、なしの三段階に設定した。毎月、食痕の有無を全稚樹で、食害量を標的木で計測し、ノウサギのパッチへの訪問数と、パッチ内の標的木の食害量の違いから、連合効果を検討した。
結果、訪問数は、カシワ・嗜好性高密度パッチ、サクラ・不嗜好性高密度パッチ、サクラ・嗜好性高密度パッチで多いように見受けられた。パッチ間では、嗜好性パッチが選ばれると示唆された。パッチ内では、サクラにおいて、周辺木のあるパッチで食害が少なかったことから、周辺木が食べられることでサクラが食害を免れた希釈の効果の可能性が示唆された。また、嗜好性周辺木が低密度時より高密度時でサクラの食害が増加する傾向が見られ、高密度時でノウサギが嗜好性周辺木に誘引される効果が起こりやすくなる可能性が示唆された。しかし、総食害数が少なかったことから、明瞭な連合効果を認めることはできなかった。引き続き2年目の調査を行い、よりデータを増やして検証する必要がある。