| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-182  (Poster presentation)

開花フェノロジーの時空間変動が高山植物の結実と種子食害に及ぼす効果【O】
Impacts of spatiotemporal variation in flowering phenology on fruiting success and seed predation of alpine plants【O】

*鈴木暁音, 工藤岳(北海道大学)
*Akane SUZUKI, Gaku KUDO(Hokkaido University)

 多雪地の高山帯では、雪解け時期が高山植物の開花フェノロジーを規定している。開花フェノロジーの違いは、植物と昆虫との相互作用にも影響する。送粉者と散布前種子捕食者は植物の適応度に大きな影響を及ぼし、繁殖形質の選択圧となる。近年、開花フェノロジーの異なる個体群では、受粉成功と散布前種子捕食者による種子捕食圧が異なることが示されてきた。しかし、同所的に生育する植物種間や山域間で相互作用の変化パターンを比較した例は少ない。本研究は同所的に分布する多年生草本であるハクサンボウフウ(セリ科)、ヨツバシオガマ(広義)(ハマウツボ科)、ミヤマアキノキリンソウ(キク科)の3種を対象に、北海道大雪山と富山県立山連峰で受粉成功と種子捕食圧を比較した。
 開花時期が受粉成功に及ぼす影響は、種間山域間で異なっていた。大雪山ではミヤマアキノキリンソウとヨツバシオガマは雪解けが早いほど結果率が高くなった。立山ではハクサンボウフウとミヤマアキノキリンソウは雪解けが早いほど結果率が高くなったが、ヨツバシオガマは遅いほど高くなった。これらの結果は、植物種による送粉者の違いや地域による送粉者の出現パターンの違いが影響している可能性がある。
 種子捕食者は植物種と地域によって異なった。ハクサンボウフウは大雪山と立山の両方でチョウ目幼虫による食害のみ見られたが、ヨツバシオガマとミヤマアキノキリンソウはチョウ目に加えてハエ目幼虫による食害も見られた。いずれの植物種、地域においてもチョウ目種子捕食者による食害は早い時期に集中している一方で、ハエ目による食害は遅い時期にも見られた。そのため、種子捕食者の割合が異なる地域や植物種の間で雪解け時期と種子捕食圧の関係は異なるパターンを示した。
 発表では送粉者および種子捕食者による植物の繁殖形質への選択圧の解析結果も示す。


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