| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-191 (Poster presentation)
気候変動に伴い、相互作用する種間ではフェノロジーがずれ、適応度が低下すること(フェノロジカルミスマッチ)が様々な生物で報告されている。食物網の下位に位置する植物と植食性昆虫の相互作用のミスマッチを明らかにすることは、上位の捕食者を含めた生物群集へ波及しうる影響の予測につながる可能性がある。植食性昆虫において、出現時期や寄主植物が限られる種はフェノロジカルミスマッチに脆弱だと考えられているが、他の生活史特性との関係が明らかになれば、今後のモニタリング対象種選定の指標への活用が期待できる。本研究では、フェノロジカルミスマッチに対する脆弱性を反映すると考えられる生活史特性と、摂食様式や摂食部位との関係を明らかにすることを目的とした。
秋田県沿岸域に身近に見られる樹木40種を対象とし、2023〜2024年に植物のフェノロジーと植食性昆虫を記録した。観察された植食性昆虫は、観察と文献から生活史特性を記録し、食性幅、出現期間、産卵期間と摂食様式および摂食部位との関係を評価した。また、対象樹種を食害する植食性昆虫種を図鑑等から抽出したデータで同様の解析を行い、野外調査データの結果と比較した。
植食性昆虫は、野外調査で5目46科136種、文献の記載から8目74科602種が確認された。摂食様式は食性幅、産卵期間について野外調査データと文献調査データの双方で有意な関係がみられ、摂食部位は文献調査データのみで食性幅、出現期間と有意な関係がみられたことから、フェノロジカルミスマッチに対する脆弱性を反映すると考えられる生活史特性は、摂食部位よりも摂食様式に影響されやすいことが明らかになった。摂食様式について、特に虫癭性の種で、食性幅が狭い種、産卵期間が短い種が多く、フェノロジカルミスマッチの影響を強く受ける可能性が示された。