| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-192  (Poster presentation)

タコクラゲに共生する褐虫藻の分子系統解析と共生メカニズムの考察【A】【O】
Molecular phylogenetic analysis and symbiotic mechanisms of Symbiodinium spp. and Mastigias papua.【A】【O】

*岩倉翔吾(明治大学大学院), 内田晴子(明治大学), 鈴木明日香(明治大学), 門田晃汰(明治大学), 井村勇貴(明治大学大学院), 向井有理(明治大学大学院, 明治大学)
*Shogo IWAKURA(Graduate School of Meiji Univ.), Haruko UCHIDA(Meiji Univ.), Asuka SUZUKI(Meiji Univ.), Kota KADOTA(Meiji Univ.), Yuki IMURA(Graduate School of Meiji Univ.), Yuri MUKAI(Graduate School of Meiji Univ., Meiji Univ.)

近年、気候変動に伴う海水温の上昇に起因するサンゴ礁の白化が起きている。この現象は、共生性の渦鞭毛藻類である褐虫藻とサンゴの共生関係が崩れることで引き起こされる。しかしながら、褐虫藻とその宿主の共生メカニズムについては、未だ多くは解明されていない。故に、サンゴ礁白化の被害を抑えるためには、褐虫藻についての幅広い研究が不可欠であると言える。褐虫藻は光合成活性やストレス耐性が種によって異なることが考えられ、環境変化に応じて優勢となる褐虫藻が変化する可能性がある。また、遊泳能力を有する宿主が褐虫藻の分布に多様性をもたらしていることも考えられる。以上のことから、本研究ではタコクラゲと共生する褐虫藻に着目した。
タコクラゲ複数個体を和歌山県田辺湾及び三重県熊野灘で採集した。タコクラゲは生存した状態で神奈川県川崎市の研究室に持ち帰り、傘・傘縁・口腕・付属器の4つの部位に分画した。その後、各部位を適当な大きさに切り分け、-80℃で凍結保存した。
田辺湾で採集した2個体及び熊野灘で採集した1個体の各部位を解凍した後、褐虫藻を含む組織を回収して研究用倒立顕微鏡等を用いて観察したところ、各部位それぞれにおいて形態の異なる褐虫藻が見られた。そのうち口腕部の組織では、挙動の異なる複数の褐虫藻が確認され、宿主組織内における褐虫藻の多様性が示された。さらに褐虫藻を単離またはそのクローン複数を収集してゲノムDNAを抽出し、PCRで増幅したITS2領域の塩基配列の解読と分子系統解析を行った。


日本生態学会