| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-199 (Poster presentation)
2008年以降、北海道から南西諸島までの10サイトで環境省によるモニタリングサイト1000(モニ1000)干潟調査が毎年実施されてきた。調査では、各サイトに2~3エリアを配置し、エリア内の潮間帯上部~下部に2~3ヶ所の調査ポイント(U・M・L)を設定し、それぞれのポイントで専門家による定量調査(コドラートとコア採集)とハビタット毎の定性調査が実施された。出現した大型底生動物を同定し、2022年までの毎年調査で確認された種数をエリア毎に合算して解析に用いた。
15年間の調査でレッドリスト掲載種234種を含む約1600種(分類群)が確認された。出現種数をサイト毎に集計したところ、種多様性には西高東低の勾配がみられ、紀伊半島以西の4サイト(石垣川平湾;436種、他3サイト:304〜420種)で高く、伊勢湾以東の6サイト(152〜296種)で低かった。同様に絶滅危惧種も紀伊半島以西の4サイトで61〜91種と多く、伊勢湾から仙台湾の5サイトで36〜58種であり、最北端の厚岸では9種と最も少なかった。また、各年・各エリアの在不在データを用いたnMDS解析により、群集構造においても北海道~東日本~西日本~南西諸島という海域毎の特徴が見られることが示された.群集構造の経年変動をサイト・エリア毎に詳しく見ると、仙台湾の松川浦サイトでは2011年の東北地方太平洋沖地震津波により群集構造が劇的に変化した他、伊勢湾の松名瀬サイトでは豪雨の影響と考えられる変化も確認された。群集構造の経時的な安定性は最南端の石垣川平湾サイトで最も低く、南西諸島のような亜熱帯海域では群集の経年変動が非常に大きいことが示唆された。
以上の知見は、気候変動、自然災害、人為的な生息環境劣化等に起因する自然および人為的変化を検出する上で、広域スケールでの長期モニタリング・プロジェクトが有効な手法であることを示唆している。