| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-201 (Poster presentation)
維管束着生植物の種数は大径木や湿潤な谷で多いこと,若齢林に比べて老齢林で多いこと,また空中湿度や降水量の高い林分で多いことが知られている.着生植物の群集形成に係る要因をより深く理解するためには,群集間での種組成の違いと,群集の入れ子・入れ替わり構造,それらに影響する要因を明らかにする必要がある.日本では老齢の社叢林で多くの着生植物が観察されることがある.各社叢林の着生植物の種数や種組成は,社叢林の湿潤度や地形(尾根―谷度),周辺の土地利用などにより異なると推測される.本研究の目的は,社叢林における着生植物の種数・種組成の違い・群集構造のパターンと,それらへの社叢林の環境の影響を明らかにすることである.高知県の20か所の社叢林において,各社叢林で大径木10本を対象に,種名・胸高直径・個体位置,固着している着生植物の種名を記録した.各社叢林の神社面積と周辺の森林面積を空中写真と環境省の植生図から,地形位置指数(TPI)と乾燥度指数を数値標高モデルと気候データから算出した.各社叢林の着生植物種数を応答変数,社叢林の環境変数(神社面積,TPI,乾燥度指数,周辺の森林面積,胸高断面積合計)を説明変数とする一般化線形モデルを構築し,種数と社叢林の環境との関係を解析した.また全調査木間での入れ子/入れ替わり要素を応答変数,社叢林の環境変数を説明変数とする一般化非類似度モデルを構築し,入れ子/入れ替わり要素と社叢林の環境との関係を解析した.その結果,種数に最も強く影響した変数は周辺の森林面積で,次いでTPIであった.種数は,周辺の森林面積が大きく,TPIの低い(尾根よりも谷に位置する)社叢林で多かった.入れ子要素にはTPIが強く影響し,TPIの高い社叢林で入れ子構造が強まった.入れ替わり要素には神社面積,次いで乾燥度指数が強く影響し,神社面積の小さい場所や乾燥度指数の大きな場所で種が入れ替わっていた.