| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-212  (Poster presentation)

雨庭が地表性の節足動物群衆に及ぼす影響【A】【O】
Effects of rain gardens on terrestrial arthropod community【A】【O】

*植平隆暉, 西田貴明(京都産業大学)
*Ryuki UEHIRA, Takaaki NISHIDA(Kyoto Sangyo Univ.)

近年、生物多様性保全を含む様々な社会課題解決のためのアプローチとして、グリーンインフラが注目されている。これまで日本で整備されてきたグリーンインフラは様々であるが、なかでも雨庭は京都市や熊本市などで多く整備されている。グリーンインフラの社会実装には自然が持つ多様な機能を定量的に評価することが不可欠であるとされているが、日本においてグリーンインフラの機能を定量的に評価した研究は、雨水流出抑制など、防災効果を評価したものが多く、生物多様性について定量的に評価した例は限られている。そこで、本研究では、雨庭の生物多様性向上への有効性と、雨庭の立地や構造が生物多様性に与える影響を明らかにすることを目的とした。まず、京都市にこれまで整備された雨庭がどのような環境に整備されたかを把握するため、国土数値情報と衛星写真データを用いて、雨庭と周囲の土地利用の関係を調べた。その結果、京都市に整備されたすべての雨庭が、森林や河川、農地などの緑地から100m以上の距離があり、500m圏内の植被率は50%未満であった。この結果から、京都市の雨庭が地表性節足動物の生息環境として好ましくない環境に設置されている傾向にあることが示唆された。次に、実際に地表性節足動物の種の多様性を評価するための予備調査として、3地点でピットフォールトラップを用いて節足動物の採集を行った。雨庭との比較対象として、付近の街路樹でも同様の調査を行った。トラップは各地点で等間隔に5個配置し、2024年8月から9月まで1週間おきに回収した。その結果、3地点すべてで雨庭よりも街路樹のほうが節足動物の種の多様度が高かった。今後は、京都市の他の地点の雨庭や他の地域に整備された雨庭で節足動物を採集し、雨庭の周囲と内部それぞれの環境条件と生物多様性の関係を分析することで、最適な雨庭の立地条件や構造を明らかにする予定である。


日本生態学会