| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-213 (Poster presentation)
生物多様性の増加は、多様な生態系機能を向上させるが、生態系機能間にはトレードオフがあるため、どの生物多様性の要素が、より多くの生態系機能を同時に向上させるのかを理解する必要がある。
特に、世界の約半数以上の人々が生活している都市域においては、都市化による生物多様性の喪失が多機能性に影響を及ぼしており、都市における生態系機能への需要が高いことを考えると、より効果的な生態系機能の管理策が求められる。
さらに近年の都市域では、人口減少に伴う空き地の増加が問題となっているため、空き地がいかに都市の生物多様性や生態系機能に貢献するかを示すための研究が行われている。しかし、空き地における生物多様性と多機能性の関係は十分に解明されておらず、生物多様性や生態系機能を考慮した、具体的な空き地の維持管理策が確立されていないのが現状である。
そこで本研究では、横浜市における69の空き地を対象に、環境要因の変化が植物と微生物の生物多様性の変容を介して、生態系機能や多機能性に及ぼす影響を構造方程式モデリングを用いて評価した。環境要因として、土壌硬度・土壌pH・周辺の都市化率・造成からの年数、生物多様性として、植物と微生物の分類的多様性・組成と植物の機能的多様性・組成、生態系機能として土壌炭素、土壌窒素、分解速度、土壌の水分浸透率を用いた。
その結果、すべての生態系機能は、植物もしくは微生物の分類的組成から影響を受けていた。これは、空き地における各生態系機能には、異なる生物多様性の要素が寄与していることを示している。さらに、多機能性に対しては、植物および微生物の分類的組成が最も強い影響を与えていた。これらより、空き地においては、各分類群における特定の種の存在が、多機能性を維持する上で重要な役割を果たしていることを示唆している。