| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-214 (Poster presentation)
本研究では、渓流水中から検出される環境DNAが、植物の群落構造及び植物群集のフェノロジカルなイベントによる影響と時空間的にどのように相関するかを実証的に解析した。
新潟大学演習林内の大倉川源流部(流域面積7.67ha)を対象に、2024年5月から11月にかけて8回の採水を行い、懸濁物、花粉、細胞・葉緑体等のサイズに対応するように200µm・50µm・5µm・0.2µmのフィルターを用いて段階的にろ過し、各フィルター上の残渣からrbcL領域を標的とする環境DNA分析を実施した。花粉画分についてはKOH処理とアセトリシス処理を行い、顕微鏡観察下で粒数と種組成を計数した。さらに、流域内に20m×50mのベルトトランセクトを4本設置して簡易植生調査を行い、高木・亜高木・低木・草本の階層構造を把握した。また、リター/シードトラップを定期回収し、落葉量と種子数の推移を調査した。
環境DNA分析では、夏から初秋にかけて検出される科・属数が増え、とくに木本種が多く検出された一方、草本種の検出は限られた。花粉分析では、春から初夏にかけて花粉粒数が最も多く、秋に向けて減少する傾向がみられた。植生調査の結果、高木層13種、亜高木層22種、低木層41種、草本層72種が確認され、特に高木・亜高木層で確認された属の多くが環境DNA分析でも検出された。リター/シードトラップ調査では、乾重量は10月、回収された種数は11月にピークを示し秋に向けて増加する傾向が見られた。
植物の群落構造や植物体の大きさがDNAの検出に関与している可能性が示唆された。環境DNA・リター・花粉の検出されるタイミングや散布パターンが異なる点が明らかとなり、環境DNAをもたらす物質が運搬、堆積、分解される過程で、タイムラグが生じている可能性が示唆された。