| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-217 (Poster presentation)
現在、里山にある水田を中心とした水田水域生態系は、生物多様性が高いと評価されている。しかし、田んぼに水が張った時にしか出現しないプランクトン群集は、生態学的および多様性という視点でほとんど研究されてこなかった。それは、肥料による窒素やリンの負荷があることや、中干しによる落水があることや浅いことに起因しているだろう。水田の運用あり・なしによって、プランクトンの季節的がどのように変化するかを比較し、人が介入することで維持される多様性について解明したい。対象とした水田は、京都府亀岡市の曽我谷川流域に位置する1面で、調査は2022年~2023年の湛水期に行われた。採水と同時に気温、水温、水位、pHを測定した。プランクトンの採集方法は、畦道をディスポカップで少しずつ採水しながら田圃を1周し、合計約3Lとなるように採水した。採水後は直ちに研究室に持ち帰り、1Lをプランクトンネット(NXX25、63㎛)を用いて濃縮し、ルゴール溶液で固定したものを定量サンプルとした。プランクトンは生物顕微鏡を用いて形態による同定を試みた。5月初旬に河川からの灌漑後代掻きが行われ水は濁っているが、5月末には植物、動物プランクトン共に現存量がもっとも高くなった。慣行農法の水田では、肉質虫が優占するが、休耕田では甲殻類が優占するようになっており、運用のありなしによって群集の変化が確認された。水田の運用が多様性を高めるとすれば、肉質虫の存在が重要かもしれない。