| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-219  (Poster presentation)

ジオ多様性による実生の種間・種内の形質変異形成: 山腹崩壊実験によるアプローチ【A】【O】
Inter- and intraspecific variation in seedlings shaped by geodiversity: a landslide experiment approach【A】【O】

*浜中修也(北大・環境科学院), 坂井励(北大・FSC), 小林真(北大・FSC), 内海俊介(北大・地環研)
*Shuya HAMANAKA(ES, Hokkaido Univ.), Rei SAKAI(FSC, Hokkaido Univ.), Kobayashi MAKOTO(FSC, Hokkaido Univ.), Shunsuke UTSUMI(EES, Hokkaido Univ.)

 近年、気候変動に伴う大規模撹乱や人為活動による大きな環境改変が地球規模で進行し、生物多様性の喪失が懸念されている。その中で、地質・地形・水文・土壌等の非生物的要素からなるジオ多様性への関心も高まりつつある。ジオ多様性は生物多様性の創出と維持において重要な役割があり、環境改変によるジオ多様性の劣化が生物多様性を減少させる可能性がある。そのため、生態系復元においてもジオ多様性と生物多様性の相互関係が注目され始めているが、これらの関係に関する生態的・進化的過程の実態はほとんど解明されていない。特に、1) 単一の非生物的要素と種多様性についての検討にとどまっている、2) 精細な空間スケールでのジオ多様性と生物多様性の関係が見過ごされている、3) ジオ多様性が種内の形質変異 (ITV) に与える影響は明らかになっていない、という点が挙げられる。
 これらの課題を解決するために、大規模な山腹崩壊実験地 (ALES) を設定した。ALESは反復性があり、精細な空間スケールでのジオ多様性がITVを形成するパターンを検出できる可能性がある。本研究の目的は、山腹崩壊後の生態系復元過程において、どのようにジオ多様性が種間・種内の形質変異を形成するか解明することである。
 北海道大学研究林に設定されたALESの4サイトにおいて、新規加入実生と土壌環境の調査を行った。実生は機能形質を測定し、土壌は礫度・含水率・無機態窒素を測定した。さらに、ドローンLiDAR測量によって精細な地形データを取得し、GISで標高・斜度・TWI・土壌侵食等を解析した。
 ALESにおいて、複数の非生物的要素が実生のITVを形成した。また、同一のサイト内でも場所によってジオ多様性が異なり、それに応答してITVの大きさが変動した。これらのパターンは種間で異なっていた。以上より、山腹崩壊後の生態系復元過程において、精細な空間スケールでも複数の非生物的要素がITVを形成する一方、ITVの大きさはジオ多様性に依存することが示唆された。


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