| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-222  (Poster presentation)

ナノポアシーケンスによる花粉DNAバーコーディングと都市緑地の送粉サービスの評価【O】
Pollen DNA Barcoding using Nanopore sequencing and evaluation of pollination service in urban green space【O】

*堀内勇寿(国立科博・植物研究部), 田中法生(国立科博・植物研究部, 筑波大学・生命環境系)
*Yuju HORIUCHI(Natl. Mus. Nat. Sci. Dep. Bot.), Norio TANAKA(Natl. Mus. Nat. Sci. Dep. Bot., Life & Env Sci, Tsukuba Univ.)

花粉のDNAメタバーコーディングは、植生や外来植物種の侵入の把握、訪花昆虫の行動履歴、蜜源植物の推定、大気花粉や法花粉学分析など、生物多様性や環境のモニタリングに不可欠な技術となりつつある。また、生態学分野ではDNAシーケンシングの選択肢として、第三世代Nanoporeシーケンサー(ONT社)の活用例が近年増えている。そこで、本研究では、ナノポアシーケンサーを用いて、I) 既知花粉種を用いた種同定精度の検証、II) 都市緑地である自然教育園・皇居域のハナアブ類の体表付着花粉のDNAメタバーコーディングにより、花粉輸送の把握へ活用を試みた。

I)は、2021年に筑波実験植物園にて、葯から直採採取した花粉サンプル(70種を対象、花粉1粒ずつDNA抽出・冷凍保存)のITS2領域を増幅させた。II)は、ヘキサン溶液中で単離・乾燥させたハナアブ類の体表付着花粉からDNA抽出後、ITS2領域を増幅させた。ONT社プロトコル(SQK-NBD114.96)に従い、ライブラリー作成とDNAシーケンシングを行った。ベースコールはDorado(ONT社, モデル:dna_r10.4.1_e8.2_400bps_sup@v5.0.0、GPU: Nvidia RTX3060)を用い、QC値15以上の配列からコンセンサス配列を生成し、Blast検索を行った。

I)について、ITS2領域では、67種では相同性が98.5%以上で、その内39種で相同性が100%一致し、50種(71%)で適切な花粉種の同定ができた。II)について、ハナアブ類258個体(自然教育園:40個体(初夏)、103個体(秋)、皇居域:115個体)の体表付着花粉から、個体あたり1-8花粉種(合計:155花粉種(69科150属))が検出できた。本研究では、都市緑地における花粉輸送の迅速かつ適切なモニタリング方法についても討論する。


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