| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-223  (Poster presentation)

身近な自然への関心とその季節性の変化:オンライン検索数のコロナ禍前後の比較【A】【O】
Changes in Public Interest in Nearby Nature and Its Seasonality on the Google Trends  Before and After the COVID-19 Pandemic【A】【O】

*小見山紗英, 中田和義, 勝原光希(岡山大学)
*Sae KOMIYAMA, Kazuyoshi NAKATA, Koki KATSUHARA(Okayama Univ.)

従来の生態系サービスの枠組みを超えた「自然がもたらすもの(NCP)」という概念が注目を集めている。NCPの枠組みでは,その評価に文化的な観点をより強調しており,異なる文化を持つ地域間や,時代の流れに沿った社会文化の変容によって,自然への関心や認識がどのように変化するかを理解することが重要である。近年,自然への関心や認識を評価する手段として,オンライン検索データ等のビッグデータを活用した研究例が増加している。また,コロナ禍は人間社会の在り方を変容させた近年最大のイベントであり,人々の自然との関わり方にも影響を与え,特に身近な自然環境の利用機会が増加したことが多数報告されている。
これらを踏まえて本研究では,「コロナ禍前後で,身近な生物種に対する興味関心は高まったか」,「コロナ禍前後で,身近な生物種に対する興味関心はより高い季節性を示すようになったか」という2つの問いについて明らかにすることを目的に,Google Trendsの提供する日本国内の検索データを用いて,検索回数の時系列変化を解析した。対象とする検索語句は「身近な自然にみられる生物種」として入門者向けのハンディ図鑑に掲載の生物種から選定し,比較対照として,日常的な接触が期待されない「絶滅危惧種」と,自然への関心と関連の少ない「年中行事」からも選定した。各検索語句のデータについて,STL分析を用いて関心の度合いの指標と関心の季節性の指標を算出し,コロナ禍前後の比較を行った。その結果,多くの語句がコロナ禍前後で検索回数が増加しており,特に身近な生物種で増加が顕著であることが明らかになった。一方,季節性の変化には検索語句群で傾向に一貫性がなく,コロナ禍が関心の高まりに与えた影響が生物種ごとに様々であることが示唆された。


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