| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-230 (Poster presentation)
水田の埋め立てを伴う開発や、水田整備に伴う生息環境の変化など(市川 2008)により、水田を生息地としていた水生昆虫が減少している。プラスチック製産卵誘致容器を使用しトンボ類を誘致し、保全した例として、久保田(2021)がある。また屋上ビオトープでの水生昆虫の保全例として養父ら(1997)がある。久保田らの行っているプラスチック製産卵誘致容器を見学した際にコウチュウ目やカメムシ目の水生昆虫が観察され、これらの水生昆虫の保全にも生かせるのではないかと考えた。
本研究では、環境による水生昆虫相の違いを明らかにすることと、減少している水生昆虫の保全、ひいては水生昆虫がコンテナ池を一時的に利用するだけではなく定着するのか明らかにすることで、保全に役立てること目的とし調査を行った。2024年の8月に、それぞれの環境にある土壌と水を用いて、3地点に3器か6器のコンテナ池を設置した。調査地は、最も内陸の東京都あきる野市横沢入、最も海に近い東京都港区大井ふ頭中央海浜公園なぎさの森、そして山と海からの距離が前述した2地点の中間となる明治大学生田キャンパスとした。2~3週間に1度コンテナ内の環境調査を行った。約1か月に1度、生物調査を行った。2024年11月には全数調査を実施した。
横沢入では、クロスジギンヤンマのヤゴ1匹と、シオヤトンボのヤゴの死体1匹が観察された。コウチュウ目やカメムシ目が誘致されるか2025年の夏に期待したい。生田キャンパスでは、ウスバキトンボとシオカラトンボのヤゴが観察された。ウスバキトンボのヤゴの2匹の羽化殻も観察され、コンテナ池がトンボ類に使用される環境の一部を担うことができることが分かった。なぎさの森では、大量のシオカラトンボのヤゴと、数匹のコマツモムシが観察された。
以上のように、シオカラトンボを除き、コンテナ池では設置する景観によって異なる種を誘致できることが分かった。