| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-232  (Poster presentation)

植生タイプに応じた地表徘徊性節足動物群集への放牧影響の季節変動【O】
Seasonal and vegetation type variations in grazing effects on ground-dwelling arthropods【O】

*西村一晟(横浜国立大学), Yulan QI(Yokohama National University), 岩知道優樹(横浜国立大学), 瀧本岳(東京大学), 黒川紘子(京都大学), BATDELGER GANTSETEG(IMGRE), 佐々木雄大(横浜国立大学)
*ISSEI NISHIMURA(Yokohama National University), Yulan QI(Yokohama National University), Yuuki IWACHIDO(Yokohama National University), Gaku TAKIMOTO(Tokyo University), Hiroko KUROKAWA(Kyoto University), BATDELGER GANTSETEG(IMGRE), Takehiro SASAKI(Yokohama National University)

乾燥地は地表の約4割を占め、ステップ・砂漠ステップなど様々な植生タイプが存在し、数多の重要な生態系サービスを提供する重要な生態系の一つである。節足動物群集は、こうした生態系サービスの基盤となっている。しかし、乾燥地生態系の主な土地利用形式である放牧は、節足動物群集に大きな変化をもたらす。持続的な乾燥地生態系の利用に向けて、放牧による節足動物群集への影響評価が行われている。
既存の研究では、放牧による節足動物群集への影響は摂食ギルドに応じて異なり、その変化は放牧による植生高や植被の変化を介在することが示唆されている。例えば、ステップでは、放牧による植生高低下を介して、明環境を好む雑食者(アリ)には正の効果、リターを採食資源とする腐食者には負の効果が及ぶ。近年の研究では、この効果が植生高・植被の異なる植生タイプや季節に応じて変化することが明らかになりつつある。しかしながら、既存の研究は植生タイプと季節に応じた放牧影響の変化を個別に検証しており、異なる植生タイプ間で見られる季節性変化の違いについては不明瞭な点が多い。植生高・植被の季節変動は、ステップでは大きいが、砂漠ステップでは元々植生が発達していないため小さく、節足動物群集への放牧影響の季節変動はステップの方が顕著になると予想される。
こうした背景から、本研究では、植生タイプに応じた節足動物群集への放牧影響の季節変動を明らかにすることを目的とした。モンゴル草原のステップ・砂漠ステップ各2地点の禁牧・放牧条件下で、節足動物を採集し、これを検証した。
検証した結果、放牧影響の季節変動は、ステップでのみ確認された。ステップでは、夏に見られた有意な腐食者・雑食者への放牧影響が春ではみられなくなった。
以上の結果から、ステップにおいては、放牧から節足動物群集を維持するにあたって、季節に応じた適切な管理をする必要があると結論付けた。


日本生態学会