| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-234  (Poster presentation)

微地形と標高勾配が植物多様性に与える影響ー鹿児島県の鵃岳における植生調査よりー【O】
The effect of microtopography and elevational gradient on plant species diversity on Mt. Bishago, Kagoshima prefecture【O】

*竹口輝(鹿児島大学), 渡部俊太郎(鹿児島大学), 田金秀一郎(鹿児島大学博物館), 山本武能(鹿児島大学博物館)
*Akira TAKEGUCHI(Kagoshima University), Shuntaro WATANABE(Kagoshima University), Shuichiro TAGANE(Kagoshima University Museum), Takenori YAMAMOTO(Kagoshima University Museum)

植物多様性に影響する環境要因の相対的な重要性は注目する空間的スケールで異なる。大きな空間スケールでは、緯度、標高の変化に伴う気候の条件の変化が重要だが、小さい空間スケールでは微地形や攪乱などが影響する。一方で中間規模の空間スケールでは、標高や微地形、攪乱などが複合的に作用すると考えられる。本研究では、暖温帯常緑広葉樹二次林の中規模の空間スケールにおける植物多様性の空間パターンと環境要因の関係性の把握を目的に、大隅半島に位置する鹿児島大学農学部附属高隈演習林にて調査を行った。調査では、標高75 –850 ⅿの間にトランセクトを8つ設置し、各トランセクトを10等分した小さい空間スケールのサブプロットごとに、出現した樹木(GBH 3 cm以上の木本、GBHと高さを記録)と林床植物(草本、実生や幼木などを含む林床付近で見られた植物)を調査し、各環境要因(開空度、林齢、微地形に相当する斜面方位、傾斜角、沢の有無)を記録した。得られたデータから植物多様性と環境要因の関係を回帰分析によって検討した。
調査の結果、優占種は標高の上昇に伴いタブノキやスダジイからウラジロガシやホソバタブ、アカガシに変化していた。植物の種多様性は標高の上昇に伴って著しく減少する傾向があったが、林床植物の多様性は標高以外の要因(沢の有無、斜面方位、林齢)からも影響を受けている可能性が考えられた。各トランセクト内のサブプロット間の種多様性の違い(β多様性)について解析すると、樹木では高標高地点で多様性が低下する傾向がみられたが、林床植物は高標高でも多様性が比較的高く保たれている傾向があった。
これらのことから① 標高に沿った種多様性・組成の変化と沢の有無などの微地形的な要因が複合してはたらくことで、常緑広葉樹二次林の中規模空間スケールの植物多様性が特徴づけられていること、②その影響の大きさは樹木と林床植生で異なる可能性があること、が示唆された。


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