| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-03  (Poster presentation)

河川環境がコイ科魚類の生息に与える影響について【A】【O】
The impact of river environments on the habitat of carp fishes【A】【O】

*田中俊哉, 小堤伊織, 越田圭祐, 原島蒼(東京都立立川高等学校)
*TOSHIYA TANAKA, IORI ODUTSUMI, KEISUKE KOSHIDA, AOI HARASHIMA(Tachikawa High School)

先行研究から、西日本に生息するコイ科魚類は、河川の上流と下流、瀬と淵など環境によって生息する種が異なる傾向があると分かっている。また、琵琶湖に生息する魚は全国の河川に人為的に移入され、東京湾に注ぐ、多摩川水系や荒川水系でも国内外来種として普通に見られるようになった。しかし、この両水系における各種の生息環境は明らかにされていない。そこで本研究では、河川環境を定量化し、両水系において移入されたコイ科魚類各種が生息する環境を特定することを目的とした。今回は、オイカワ(Opsariichthys platypus)、カワムツ(Candidia temminckii)、ヌマムツ(Candidia sieboldii)の3種を対象とした。
各調査地点に生息する種とその割合を調べる魚類相調査と、魚類相調査を行った地点の環境を定量化する環境調査を行った。魚類相調査では、網目3mmの叉手網とタモ網を用いて魚類を採捕し、各個体の種と標準体長を記録した。環境調査では、区画法に基づきその地点全体の水深、流速、底質などを記録した。
この調査を昨年5月から今年1月までの期間に計71地点で行い、魚類相調査では計9,986匹を採捕し、環境調査では環境要素合計で24,913個の実測値を得た。なお、各地点における魚類相調査と環境調査は同時期に行った。
この結果をもとに、魚種の生息の有無を目的変数、環境調査の結果を説明変数として数量化Ⅱ類を行い、各対象魚種の生息しやすい環境と生息しにくい環境を特定した。解析の結果、3種の中ではオイカワのみ生息しやすい流速環境が異なることが示唆された。また、カワムツとヌマムツそれぞれが生息しやすい環境と生息しにくい環境は、底質において対照的であることが示唆された。これらのことから、移入先の多摩川水系と荒川水系においても、3種それぞれの生息に優位な環境は異なると考えられる。


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