| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-04 (Poster presentation)
【背景・目的】
生命科学分野の研究にこれまで利用されてきた両生類は無尾目のアフリカツメガエル,ネッタイツメガエルで,近年,有尾目のイベリアトゲイモリが新規モデル生物として導入されている.文部科学省NBRPで広島大学からイベリアトゲイモリを提供してもらえることになったため,まず動物実験委員会を立ち上げ,知識と技術を身に着けるために,発生や生殖についての基礎的な実験に取り組んでいる.
【材料・方法】
1 繁殖方法として,飼育ケースでの自然産卵と人工授精を試みた.
2 卵割:自然産卵と人工授精で得た受精卵を使い,発生を観察した.
3 幼生の飼育実験:飼育密度が共食いに与える影響を調べた.
4 配偶行動の誘発:雄雌にHCGを注射し,配偶行動を観察した.
5 生殖器官の観察:雄の精巣,輸精管,雌の卵巣,輸卵管,および貯精嚢を摘出し,ミクロトーム,HE 染色を用いて組織標本を作成した.
【結果・考察】
1 人工授精では,採卵した卵とゼリーに質があり,ゼリーの質で受精に適した状態か適さない状態があるかを判断できることが分かった.
2 受精卵を採取し,発生段階(第2細胞期,第4細胞期,第8細胞期,桑実胚初期~後期,胞胚初期~後期)を観察できた.
3 幼生は,高密度で共食いが起こり,成長速度に差ができることが分かった.
4 配偶行動(雄が雌の腹側に回り,後ろから雌に腕を回す配偶行動と片方の腕を絡ませて雄が雌の前を塞ぐように回転する)を観察できた.
5 精巣,卵巣では様々な発達段階の細胞を観察し,未発達の細胞や卵が成熟した精子や卵に発達するサイクルが確認できた.