| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-10  (Poster presentation)

1929年出版の武蔵野動物相目録に掲載されたヘビ標本の発見とその意義【A】【O】
Finding of snake specimens illustrated in "Fauna Musashinensis (1929)"【A】【O】

*三木航介(武蔵中学校・生物部), 白井亮久(武蔵高校・標本庫学)
*Kousuke MIKI(Musashi Junior High School), Akihisa SHIRAI(Musashi High School)

 Fauna Musashinensis(武蔵野動物相目録)は旧制武蔵高等学校が1929年に出版した東京区部西部の動物目録である。昆虫や淡水魚,両棲爬虫類が,当時の専門家によりまとめられている。動物学者の岡田彌一郎が執筆した爬虫類は,トカゲ亜目3種とヘビ亜目7種が掲載されており,当時のトカゲやヘビの生物相を知ることができる。その中にはシロマダラなどの貴重なものもある。目録にはSp.No.と記された標本番号らしきものも記載されている。
 旧制武蔵高等学校を前身とする武蔵高等学校中学校には,多数の博物学標本が残っており,十数年前より整理を進めている。液浸標本は約1000点あり,その中でヘビ標本は50点ほどみつかり,その中から武蔵野動物相目録が出版された1920年代の標本に着目した。年代の記載された標本は9点みつかり,その標本瓶とラベルの類似により,同年代に採集されたとみられる合計24点を確認した。標本瓶にはラベルとは別に管理番号と思われる数字シールが張られているものもあった。
 標本瓶を開封し,体長や頭鱗・体鱗列数などを計測し,再同定を試みた。その結果,31個体5種を確認し,記載ラベルの誤同定も確認できた。また,武蔵野動物相目録掲載の図版の写真と酷似する標本も見つかり,それらのSp.No.と標本瓶の管理番号が一致し,管理番号は目録のSp.No.を示すことが分かった。このことから,それらの標本は動物相目録に掲載されているものと判断できた。
 再同定結果から,当時シロマダラとされていたものはアオダイショウであること,採集日の記載はないが,管理番号から1920年代の標本であると推定されるなど,本研究により,学校に残っている標本のラベル情報の補完と,標本や目録の誤同定を見つけることができた。これらの標本を100年前の東京の自然を示すものとして,利活用していきたい。


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