| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-11  (Poster presentation)

奈良県生駒市におけるツバメの給餌行動の観察と給餌内容の解析【A】【O】
Observation of chick-rearing behavior of male and female Barn swallow in Ikoma City, Nara Prefecture, and analysis of their food contents.【A】【O】

*荻巣樹(奈良女子大学附属中等)
*Itsuki OGISU(NWUSS)

奈良県生駒市の飲食店街でツバメ(Hirundo rustica)のコロニーを発見し、これをきっかけに2018 年 から2024年の7年間、同地域のツバメの子育てを観察してきた。本研究ではツバメの子育てにおける雌雄の行動の違いを明らかにすること、子育ての時期によって親鳥の行動は変化するかを明らかにすることを目的とした。なお、日本国内においてこれらを明らかにした研究は限られている。また、子育てを調べることは近年減少傾向が見られているツバメの保全にも繋がると考えている。

2018年から2024年までの繁殖期(5月~7月)に、各巣の親鳥の行動を毎日放課後の1時間観察し、給餌回数および巣内での滞在時間を雌雄別に記録した。その結果、雄は給餌回数が多く、雌は巣内での滞在時間が長い傾向が見られた。これは、雌が抱卵斑を持つことでヒナの保温に適しているためと考えられた。

また、孵化時期が遅くなるほどヒナの巣立ちまでの日数が短縮する傾向があった。孵化時期が遅くなっても給餌回数は増加していないため、親鳥の給餌している昆虫の種類が異なった結果ヒナの成長が促進されているのではないかと考えた私は2022年度からヒナの食性解析を行う事とした。
2022年度はビデオカメラでの給餌行動の撮影による給餌内容の解析や、ヒナの糞を回収し自作の濾過装置で濾過をした上での顕微鏡観察を試みたが親鳥の給餌内容はほとんど判明しなかった。

そこで、2023年度からはヒナの糞に含まれるリボソーム 16S rRNAの部分配列を決定し、BLASTNを用いてDNA解析を行うことのより(解析は生物技研に外注)、給餌内容の特定を試みた。その結果5月と比べて6~7月にはチョウ目やトンボ目の昆虫の割合が増加してるなど、子育ての時期によって与えている昆虫が変化することがわかった。これがヒナの成長に関わっている可能性が考えられる。


日本生態学会